Jul 20, 2019

COLUMN

老舗が出したひとつの答えは、今多くの未来を生み出そうとしている。

老舗の歴史と個人の経験やこだわりが結実してできる未来

まずは佐藤防水店さんと佐藤さんご自身のこれまでの歩みについてお伺いしてもよろしいですか?

会社自体は1951年創業のテントシート屋さんです。たとえばトラックのシートとか、お店の軒先につけるテントをつくる会社を祖父の代からやっていて、僕で4代目になります。
ただ社会に出てすぐ継いだというわけでもなくて、僕はそもそも人と喋るのがあまり得意な性格ではなかったもので、ちょっとこれはまずいなって自分なりに思った際に、どうせ働くなら人と話せて自分の成長に繋がるとこがいいということで大分の百貨店に就職したんです。
そこで23歳から28歳まで、接客だとか人との繋がりとかを勉強させていただいていたのですが、その中で、三代目をしていた母がちょっとずつ体調を崩していって、いよいよ帰ってこいっていう感じになって。

佐藤さんが佐藤防水店に戻られる前から今のようなバッグの生産や展開はすでに会社として取り組まれていたのですか?

いえ、全くです。僕が入社した時は実直に老舗のテントシート屋さんとしてやっていたわけですけど、ただ既に売り上げがもうずっと下降気味の状態だったんですよね、毎年。その時に、これから先継いでやっていくうえで自分としては経営の軸として「3本の柱」が欲しいと思って…、というのも、僕三国志好きなので、テントとシートだけじゃやっていけない、じゃあ何がある?ってなった時に百貨店で働いていた時にアパレルを担当している中で、オーダーメイドのものがやっぱいいよねっていう風潮が強くなりはじめた先駆けの年だったこともあって、うちは縫製の技術もあるし今までちょこちょこ仕事ももらっていたのでじゃあちょっとバッグ作ろうかっていう話になったんですよ。バッグ部門はその時に立ち上げたので、まだ今10年目というところです。

そこからわずか10年でバッグ部門は佐藤防水店さんの目玉事業のひとつに成長したと思うのですが、佐藤さんよりずっと長く会社で働いている職人さんや社員の方たちは開始当初どのように反応されてましたか?

あー、もうそりゃやっぱり大反対されましたよ(笑)新しいことを始めると設備投資もかかるし、新しく人もいるし、まぁ結構な大反対だったんですけど、結局はこの状況だし、新しいことやらないとちょっときついぞってなんとか説得して。それに、もともと一番の目的はテント屋さんっていうのを知ってもらいたかったというのもあるので、そのきっかけとして人の目に触れるものを作りたかったっていうがあったわけなので。今は「バッグ屋さん」と言われるぐらいにもなっているなので、そういった部分でこれまでとは違った消費層に広く知ってもらってたりもするし、うちの社員もみんな応援してくれてます。

本業のテントなど、創業時からの主幹事業に対しての、認知の跳ね返りみたいなことが起きているということですね?

大きいですね。一番分かりやすいのは求人ですよね。昔だったら、求人出しても全然反応がないのが当たり前だったのに、今ではありがたいことに多くの反応をいただけるようになって。だからそういった部分では会社全体の知名度が上がっているのかなって嬉しく思っています。
あとはそれによってうちの職人さんたちが誇りを持てるというか、そういうインナーモチベーションにも確実に繋がっていますね。

バッグなどの商品開発は誰が主にされているのですか?

もちろん僕も考えますけど、デザインにはデザインの責任者もいるし、そのデザイナーや職人と試行錯誤しながらこういう形がいいんじゃないかとかいろいろ考えながら作ってます。それは今も変わらずそうです。それにうちはトップダウンというよりはボトムアップを意識している会社なので、アイデアや意見はみんなが僕に伝えてくれるというスタイルです。

プロダクトの一つ一つに対して、メーカーとしてのこだわりみたいなものってありますか?

バッグということに関して言えば、まずは長く使ってもらいたいと思っています。だから日本で初めてであろうくらいの一番ぶ厚い生地を使ってトートバッグを作っていたり。結局それがバイヤーさんに「こんなぶ厚いトートみたことねえよ!」ってとにかく気に入ってもらえて。今では同じようなことをやっているとこもいっぱいあるんですけど、一番理想がおじいちゃんから子ども、お父さんお母さん、お父さんお母さんから子どもに受け継がれるぐらい長く使って欲しいっていう思いが強いので。生地感でいうと佐藤防水店は創業以来生地をたくさん扱ってきた他にはない実績や知識はあるので、その強みをしっかり商品に落としこむぞっていうこだわりがあります。

メーカーとしてはもちろん、経営者としてセールスの側面も必要だと思うのですが、そこはどうしているのですか?

実はうちは今までセールスをまともにしたことないんです。ありがたいことに、うちを気に入ってくれてるところに商談に行くというか、話しをさせていただくというスタイルなので。こっちからっていうのはまだ一回もないのですが、ただうちみたいなことやっている所いっぱい出て来てるし埋もれちゃうのも嫌なのでやっぱりちょっとこれからは世に出て行こうかっていう話しもあって、台湾の展示会とかに行ったりしながら、海外向けに商品を展開する動きを探ってみたりだとかもしています。

アジア展開!それは楽しみですね。他に今後の展望とかってお聞かせいただけますか?

展望はいっぱいあるんですよ、ほんとにめちゃくちゃいっぱいあって(笑)でもまずはやっぱり、最近ってトートにしてもしかりなんですけど、みんな求めてるバッグの形というか素材というかが違ってきているというのを強く感じていて、よりパッカブルみたいな軽くて持ち運びができてというところにトレンドも変わってきてるので、そういうのもやっぱり周りの変化に柔軟に対応しながらうちのデザインだとか生地という強みに落とし込んでいくっていうことをやっていきたいなって思ってます。
それに、大分って面白いことやってる会社がいっぱいあるんですよ。そういうとこといろいろコラボして展開したいです。この店舗(Re-sew)を大分のアンテナショップとしてうちだしていきたいので、埋もれている技術だとかとうちが絡み合っていろんな人に知ってもらえたらって思います。

佐藤さんにとっての「おしゃれな人」ってどういう人ですか?

ファッションってその人のオーラに付属品として何をくっつけるかだと思っているので、結局かっこいい人って何着てもかっこいいんですよ。ファッションってその人を着飾るアイテムだと思うのでまずは僕は人を見ちゃいますね。オーラ的な部分で。この人かっこいいなって、何着ても似合うんだろうな、これをこう着こなすんだとか、この人しか多分似合わないだろうなっていうのいっぱいあるじゃないですか。そこを強く感じる人かなぁ、おしゃれな人っていうところで言えば。

佐藤さんご自身はどういうファッションを着ていたいとか、自分が服を着るにあたって気をつけていることってりますか?

男の人って、女性に比べて服に疎いじゃないですか。同じものをずっと着続けたりとか、またこれ同じ色買って来たねとかいうパターンがよくあるんですけど、僕それが嫌なんです。だからストリート系を着ることもあればモード系を着ることもあるし、アメカジの時もあればトラッドの時もある、いたいなその時々の気分やTPOを考えながらスタイルを選ぶので、バリエーションはいっぱいありますね。なので好きなブランドっていうよりは、とりあえず直感で買って着てみてっていう感じで悩まないです。あと、うちはバッグを作ってるので、バッグを引き立たせるためのファッションっていうのはよくします。だからバッグが主役のコーデが多いですね。

MY FASHION STORY

季節を問わず、海やその周りに広がる緑の公園が清々しいかんたん港園の爽快な景色のそばに新店舗をオープンさせたばかりの佐藤さん。店内には佐藤さんのこだわりが詰まったバッグはもちろんのこと、セレクトショップとして、ライフスタイル全体への提案も強く感じられました。そんな店内でのインタビュー。これまでの10年のこと、これからのことに想いを馳せながら語しをしてくれる佐藤さんの言葉にはよどみもなく、すらすらと、すんなりと聞き手にもはいってきます。おそらく日々、常に未来の佐藤防水店、そしてそれをとりまく環境について想いを巡らせているんだろうなぁなんて、お話しをうかがいながら思ってしまいました。
スタイルをあえてつくらない。そんなこだわりもまた、今や未来に対してニュートラルでいようとする佐藤さんのファッションに対するひとつの向き合い方が現れているのかもしれません。

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